blog
オーダーメイドシザーケース 製作風景 vol.11
こんばんは。toolsの小柴です。
今日も引き続き、オーダーメイドシザーケース 製作風景 vol.10になります。
残り後、2、3回で最終回になりそうなので、見てくれている方は、もう少しお付き合い頂けると嬉しいです。
今日は、サクッとですが、本体背面にダックカールベルト、ブラシホルダー、底フタをボタンでバチンと留められるようにしていきます。
サンプル製作の際に、取り付け位置は確認しているので、本当にボタンを真っ直ぐに取り付けるだけの作業です。
取り付けるボタンは「ジャンパーホック」というジャンパー等で使用されているとても頑丈なボタンです。
このボタンを選ぶ理由は、簡単にボタンが外れない強度がある事と、長い間壊れないという2点です。
流石に、大体のシザーケースは、このジャンパーホックを使用していると思いますが、稀に「バネホック」というボタンを使用しているのを見かけます。
上の写真がバネホックというボタンで、オシャレ小物でよく使用されますが、ボタンが簡単に外れてしまうのと、早いと3年程度で寿命を迎えてしまうので、シザーケースには不向きなボタンです。
シザーケースを購入する際は、「ジャンパーホック」を使用している物を選ぶと、修理いらずで、長く使う事が出来ると思います。
4箇所にボタンを取り付けて完了です。
実は、長年使用してもボタンが緩くならない小技を使っていますが、企業秘密ということで、今日はここまでです。
オーダーメイドシザーケース 製作風景 vol.10
こんばんは。toolsの小柴です。
今回は、ブラシホルダー部分の製作を行います。
既製品のシザーケースですと、様々なブラシのサイズに対応するのが難しい為、あまり付いているタイプは見かけないですね。
オーダーメイドですと、2、3人に一人の美容師様は、このブラシホルダーを本体の外に付けて欲しいと注文があります。
かさばる道具ですので、外に出すことで、コーム等がグッと取り出し易くなると思いますよ。
まずは、パーツの角をアールになるように裁断します。
角のアールを大きくすると柔らかい印象に、逆に小さくすると硬い印象になります。
オーダーして頂いた方の雰囲気や印象で作品のアールの大きさを変えています。
今回は、大きめの500円硬貨を使ってアールを裁断していこうと思います。
写真は、ボタンを取り付ける為の穴を空け、ジャンパーホックを付けている所です。
私がよく使う手法なのですが、ブラシホルダーを取り外し可能な着脱式にします。
パーツを外せるようにしておくことで、将来リペアが必要になっても、破損したパーツだけ製作すればよいので、安価な値段で対応する事が出来るからです。
本体と縫い合わせてしまった場合、取り付け方によっては縫製を解いて、新しいパーツに取替え、更に縫製し直すという工程が必要になりますので、高額なリペア代になってしまいます。
なるべく、お客様の負担が軽くなるように、将来の事も見据えて設計する事はとても大事です。
今回は、ダックカールベルトとブラシホルダーを一緒のパーツにします。
パーツ同士の接合縫製とブラシホルダーの縫製を一緒に行う必要がある為、手縫いで縫製しようと思います。
写真は、専用のキリで縫製する為の穴を空けた所です。
縫製が終わりました。
これで、ダックカールベルトとブラシホルダーパーツが出来上がりました。
ブラシホルダーのサイズは、サンプル製作後のフィッティングでは少し合わなかったで、型紙に修正を加えています。
完成品では、ばっちりのサイズ感でご使用頂けるはずです。
オーダーメイドシザーケース 製作風景 vol.9
toolsは横浜エリアの美容師様からご依頼頂く事が殆どだったのですが、ここ最近は、東京のお仕事も増えてきています。
オーダーメイドの製作を通して、少しづつ広がっているんだなと、ようやく少し実感出来るようになりました。
更に、感性と技術を高めて、お客様の期待に応えられるように、頑張っていこうと、気力がわいてきますね。
さて、本題のオーダーメイドシザーケース 製作風景 vol.10ですが、昨日の続きで、本体とベルトの接合パーツです。
Dカンの付いた接合パーツを、本体の背中にあたる場所に、取り付けていこうと思います。
大体の位置を合わせたら、ボンドで接着します。
パーツと本体の縫い合わせも、前回と同じ、強度を最大限に高めたいという理由から手縫いで縫製します。
ミシンも使えますが、絶対の信頼は手縫いにあります。
日本で手縫いを始めた第一人者に教えを請うことで、体に叩き込んだ技術です。
製作を早く行う為、色々な機械や道具を駆使しますが、最悪、針と革包丁だけあれば同じ物を作れるというのが、職人にとって理想だと思っています。
ここは、絶対に外れて欲しく無い、一番重要なパーツです。
普通に縫っているように見えますが、一つの穴に対して糸が重なり合わないように二縫いしています。
糸の強さによっては、一縫いにしますが、今回は、麻糸を使用している為、これまでの経験から二縫いにした方が良いと判断しました。
それでは、今回は、ここまでです。
オーダーメイドシザーケース 製作風景 vol.8
こんにちは。toolsの小柴です。
当初、vol.10位まで続くと言っていたオーダーメイドシザーケースの製作風景。
余裕で10を突破していきそうです。。
いまだかつてない程、細かい製作風景を掲載しているので、ボリュームは中々ですね。
今日は、ベルトと本体の接合部パーツの製作です。
ここは、一番強度を必要とする為、常に良いアイディアが無いか考えている所です。
自分の試した方法が正しかったかどうか結果が出るには数年を要しますので、オーダーメイドの際に美容師様のシザーケースを見させてもらっています。
これで、「あぁ、この方法では駄目なんだな」とデータを蓄積して、今の最良の方法に行き着きました。
まずは、パーツの折り返し部分の先端を漉きます。
漉機も所有していますが、これ位は、革包丁で作業した方が早いので、サクッと部分漉き。
先端が細くなっているのが、分かりますでしょうか。
そして、穴空けを行います。
穴が大きくなり過ぎないように、専用のキリを使って慎重に作業を行います。
そして、手縫い。
ここは、2重に縫製する事で、強度を最大まで高めます。
シザーとその他道具が入ったシザーケースは、かなりの重みになるのに加え、ほぼ毎日使用される事を想定しなければならないので、妥協が許されない所ですね。
オーダーメイドシザーケース 製作風景 vol.7
こんばんは。toolsの小柴です。
本日は、シザーケースの製作風景vol.7になります。
前回、シザーホルダーが完成しましたので、5丁分のシザーホルダーを本体に取り付けていこうと思います。
お客様のご希望でステッチはダークブルーを使用。
縫製してしまうと、黒と殆ど変わりませんが、とても良い選択だと思います。
何故なら、自然界の色で唯一、真っ黒、RGBで言うとと#000000だけは存在しません。
なので、人間が、真っ黒を見てしまうと深層心理の深い所では、不安な気持ちになっているんです。
ステッチの色が少し違うだけで、作品が真っ黒ではなくなるので、パッと見た感じ黒でも安心出来る作品になっているはずです。
そして、今回は、ミシンで縫製していきます。
このSEIKO17ミシンは厚い革でも糸をしっかり締めて縫ってくれるので重宝しています。
ミシンで縫製する場合、始まりと終わりの糸を焼き止めします。
糸を最終的に隠れるパーツの後ろ側に出してあげて焼き止めするのがポイントです。
この縫製~焼き止めを5丁分繰り返して、作業完了です。
本体にシザーホルダーを取り付ける事が出来ました。
段々と、シザーケースと分かるようになってきたのではないでしょうか。
続きは、vol.8でご紹介しますので、今回は、ここまでです。
オーダーメイドシザーケース 製作風景 vol.6
オーダーメイドシザーケース 製作風景 vol.6は、シザーホルダーの製作になります。
シザーホルダーは、既製品ですと、シザーが入らない事を懸念して大きめに作られていることが多いですね。
オーダーメイドの場合、お使いのシザーに合わせて製作するのですが、一般的なサイズより小ぶりになる事が多く、使い心地だけで無く、見た目もスッキリするのが良いですね。
今回は、5丁用のオーダーでしたので、5つのシザーホルダーを製作します。
使用するボンドはG17ボンド、柔軟性と即乾性が抜群なので、これを採用しています。
品質を下げずに、工数を減らすことは、価格を抑える事にも繋がるので、常に考えるようにしています。
一般的なレザークラフト用のボンドと違い、革の表革に付着した場合、取れなくなるので、慎重に塗っていきます。
とはいえ、このボンドとの付き合いも長いので、そうそう失敗はいたしません。
そして、2分放置した後に、木槌で叩いて圧着します。
シザーホルダーは頻繁にシザーが出し入れされますので、破れないように革を厚くしています。
そして、側面をヤスリでサッと削り、以前ご紹介したトコノールで仕上げます。
基本的に、重なりあって見えない所なので、それほど神経質に作業はしません。
見えない所に時間を掛けている事を売りにしているブランドを見たことがありますが、作業に掛かった時間がシザーケースの価格の大半を占めます。
機能性も見た目も変わらないのに、価格が上がってしまっては、本末転倒なので、効率よく作業を進める事を心がけています。
オーダーメイドシザーケース 製作風景 vol.5
シザーケースの製作風景vol.5です。
前回、パーツのフチを磨いた所までお伝えしましたので、今日は、完成したシザーケースが更に良く見える工夫をしていきます。
ご紹介する作業はパーツのフチにラインを入れる「フチ捻」です。
「フチ捻」を入れる事で、作品の高級感が増すので、私は、主要パーツにのみ入れるようにしています。
全部のパーツに入れてしまうと、クドイので。。主要パーツのみがポイントです。
では、早速、作業の準備をしていきます。
ラインを綺麗に出す為に、道具をアルコールランプで熱します。
そして、主要パーツのフチにスッとラインを一回引いてから、二度目に力強くラインを引いていきます。
道具をアルコールランプで熱してからラインを入れると、フチが引き締り、強くなると言われています。
一度、本当に強くなっているのか検証しようとしましたが、正直、検証の仕方が難しく、強くなっていればいいなという程度に考えています。
綺麗にラインが引けました。
パーツだけで見ると分かりづらいのですが、後々の完成品はグッと印象が良くなるでしょう。
こういった細かい工夫の積み重ねが、良い作品になっていく唯一の方法だと思います。
オーダーメイドシザーケース 製作風景 vol.4
シザーケース製作の様子も4回目になりました。
いかんせん文章がそれほど得意ではないので、少し読みづらいかもしれませんが、本日もお付き合い頂ければと思います。
今日は、切り口の処理をご紹介しようと思います。
革を切っただけでは、見栄えが悪いので、美しくなる処理を施していきます。
まず、断面に軽くヤスリをかけてあげて切り口を整えます。
そしてトコノールという糊を薄めたような仕上げ剤を使って作業をしています。
色々な切り口の仕上げ剤を使ってきましたが、これが一番自然に美しく仕上がりますね。
ですが・・
前回に引き続き、やっぱり擦ります。
一番美しく仕上げるには、根気が必要なんです。
割愛してますが、トコノールの前に水を吸わせて擦っています。
これを納得いくまで繰り返すと。
上と下で比べると分かりやすいですね。
下が磨き終わったシザーホルダーの断面です。
ツヤツヤと光輝いているのが一目瞭然です。
良い革は、この作業にきっちり応えてくれます。
安革なんかは、いくら磨いても駄目だったりしますね。
個人で製作を行っている工房さんは、この作業を抜かり無くやっている事が多いですね。
恐らく、商品というよりは、作品を作るというマインドで製作を行っているからだと思います。
スッと塗っただけでビカビカになる仕上げ剤もありますが、やっぱり嘘臭くて好きになれません。
ライン生産の革製品は、こういった簡単な仕上げ剤を使っている事が多い気がします。
それでは、また明日も更新いたしますので、お時間がありましたら覗いてみて下さい。
オーダーメイドシザーケース 製作風景 vol.3
全くもって私事ですが、本日33歳の誕生日を迎えました。
去年は、しれっと誕生日が過ぎていきましたが、今年は、祝ってくれる人が現れたので、先程まで外出していました。
もう誰かに祝ってもらう年でもないと思っていましたが、やっぱり嬉しいものですね。
しかし、少し寒い夜の帰り道を歩いていると、もう33歳か。。とシミジミ思ってしまいました。
昔は、湯水のごとくあると思っていた時間も、少しづつ有限である実感がわいてきた今日この頃。
よりいっそう頑張らねばと自分に言い聞かせるのでした。
と、駄文は、この辺にして、オーダーメードシザーケースの製作の様子を引き続きお伝えしようと思います。
昨日は、全てのパーツをオーダーメイドの型紙に合わせて切り出した所まで掲載しました。
普通は、このまま本格的な製作に入っていくのですが、toolsは、その前にもう人手間かけています。
それは、革を磨く作業。
作業自体は、簡単ですが、いかんせん力と時間を使うんです。
濡らしたタオルで革に水分を入れてあげて、ひたすら擦る。
唯一、気を付けるのは、爪で革を引っ搔かないようにすることですね。
大切なパーツにガリッと傷が付いたら大変です。
濡れた革で擦った後は、乾いたタオルで擦る。
また、ひたすら擦るんです。
何故、こんなことをしているかというと、革に自然な光沢を出す為です。
この工程をするとしないでは、完成した見た目の印象がまるで違います。
そしてもう一つ、水を弾きやすくなり、染みになりにくくなります。
シザーケースは、水に濡れる事が多いので、この工程は、必ず入れるようにしています。
左が、擦っていない革、右が擦った革です。
写真でも、全く違うのが分かりますね。
蝋を入れたブライドルレザー何かは、擦れば簡単に光沢が出ますが。
普通のヌメ革をここまで輝かせるのは、中々、大変です。
表面に顔料を塗った革は、最初から光輝いていますが、雰囲気が嘘臭いので駄目ですね。
顔料では無く、染料を使用した革をひたすら磨く。
これが、見た目と機能性を向上させるポイントです。